2021年版・ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう━━トークイベント・完全版レポート公開!!①

2021年10月30日(土) に行われたトークイベント「ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう2021」の完全レポート!
2019年に行われた前イベントは東京でのリアルイベントでしたが、今回はコロナ禍のオンラインイベント!全国から参加してくださったファンのみなさま誠にありがとうございました!
今回もファン必見の内容盛りだくさんとなっておりますので、ぜひぜひ最後までお楽しみください!
株式会社シュークリーム(マンガ編集プロダクション) 2021.12.23
誰でも

ヤマシタトモコ Tomoko Yamashita 2005年デビュー。2010年、「このマンガがすごい! 2011」オンナ編で『HER』が第1位に、『ドントクライ、ガール』が第2位に選出される。『さんかく窓の外側は夜』が実写映画化&TVアニメ化。小誌連載中の『違国日記』は「マンガ大賞2019」第4位&「マンガ大賞2020」第10位ランクインほか、「第7回ブクログ大賞」のマンガ部門大賞を受賞。第24回文化庁メディア芸術祭(2021年)のマンガ部門「審査委員会推薦作品」に選出され、各メディアで話題沸騰中。

Q:『違国日記』誕生の経緯

――今回も読者のみなさんからたくさん質問をお寄せいただきました。ありがとうございます。

ヤマシタ ありがとうございます。 

――やはりみなさん、『違国日記』がどのように生まれたのか、どうやって各話が作られているのか、創作部分にたいへん興味をお持ちのようです。

これまでにインタビューやトークイベントのたびに何度もお話しされてきたことではあるのですが、おさらいも兼ねてあらためて伺えたらと思います。 

ヤマシタ もう五百回くらいお話ししていると思う(笑)。どのあたりからにしましょう?

――では、そもそものところからということで、以前から『違国日記』のような話を描きたいと思っていたのですか? 

ヤマシタ 基本的に、漫画を描かねばならないという状況にならないと話を考えないので、次の連載をどうするか担当さんと打ち合わせることになったときにぼんやりと考えた感じです。打ち合わせの直前にポール・フェイグ監督がリブートした『ゴーストバスターズ』を観て、女性が連帯して「うぇーい」とやっている感じがすごくいいなと思っていたこともあって、そういう感じのものを描きたいとは思っていました。 

ヤマシタ ただ、まあ、最初の打ち合わせで話すことなんてほとんど嘘ですよね(笑)。そのときは、若い女の子が年上の女性から愛されたいと思ったり連帯を欲しがったりそれを感じたりする話を描きたいような気がする感じがしますね、という話をしたように思います。 その後、担当さんのもとにはそのときに話したのとはまったく違う話がネームとして上がってくるという。 

――それが『違国日記』の第一話だったわけですね。

ヤマシタ 今思うと本当に不親切で申し訳ないことに、一話と二話のネームを同時に出せばまだよかったものを一話のネームだけ出した結果、この話はこの後はたして面白くなるのかという不安を担当さんには抱かせたことと思います。なんとかなります、で押し切った感がありました(笑)。 

――その時点で、どのくらいの長さの物語になりそうか見通しは立てていたのですか?

ヤマシタ そんなもの立てたことがないです。常に自転車操業でやっているので、今もそろそろ上げなくてはならないネームができておらず、 どうしたものかと思いながらしゃべっています。

担当 ヤマシタさんはこうおっしゃいますが、実際の締切より前倒して作業されているので、言葉通りなほど逼迫した事態であることはまずないんですよ。 

ヤマシタ それは締切を破る恐怖が大きすぎて前倒して進めているだけで、その余裕が喪われつつあるとやっぱり恐怖で慄いちゃうんですよ。締切を破りとうないんじゃ…。

――ネームはこのイベント後にがんばっていただくとして(笑)、『違国日記』は朝が高校三年生のとある一日から話が始まりますが、二話からは物語の時間軸が過去に遡ります。この構成は最初から物語を固めていたからなのかなとも思ったのですが。 

ヤマシタ どうしてああいう構成にしようと思ったのかまったく記憶がない。全然覚えていないのはなんでだろう。

 ――ああいう構成にするのがいちばんしっくり来たから...とか?

ヤマシタ わからない...。

担当 当時もそのことについて意図をお話しされていた覚えがないので、私もわからないです。

ヤマシタ じゃあもう誰もわからないということで闇に(笑)。今ぱらぱらとネタ帳を見たのですが何も書いてないんですよね。

――そういえば『違国日記』では初めてネタ帳を採用されているのでしたね。以前に、ノートの冒頭にこの作品のテーマのような大切な要素がいくつか書かれているのを拝見しましたが、そのネタ帳にも構成の真意は書かれていないと。 

ヤマシタ その冒頭に書いたやつも、書いたことを私はすっかり忘れていたんですよ。我ながらいいこと書いているんですけどね。 こういう話を描くぞという、自分がブレずにいるための所信表明のようなものだったんだろうと思うのですが、書いたことそのものが記憶から抜け落ちていて。何かのインタビューの際にネタ帳をめくりながら記憶をたどっていたときに発見されて、へーって思いました(笑)。

――発見というか発掘というか。 

ヤマシタ 内容云々じゃなくてメモした事実を忘れちゃうから。

(書き込まれるコメントを見ながら) 

ヤマシタ ......あ、優しい。『血肉になっている』だって。いいように捉えてくれている(笑)。

 ――そういうことにしておきましょう(笑)。

***

トークレポートは毎週木曜日16時〜から、全5回にて公開予定!制作の裏側をたっぷりと、次回からもヤマシタ先生の語る「違国日記」の濃密なトークをお届けいたします!次回、12/30更新の第2弾の更新をどうぞお楽しみに!!

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